高次脳機能障害の症状
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害とは、外見上の身体的な麻痺は認められない、または認められても軽度なものですが、大脳のウェルバランスが崩壊してしまった状況を差します。
大脳が司る感覚機能や、手足の運動機能には大きな障害が認められないにもかかわらず、大脳の機能に大きな障害が認められ、社会適合性を大きく欠いてしまう症状が見られる障害です。
損傷部位と症状
高次脳機能障害は、損傷を受けて障害されている部位によって、症状が異なります。
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前頭葉の障害
前頭葉が担う役割は次の通りです。
行動の開始・問題解決・判断・行動の抑制・計画・事故の客観化・情緒・注意・言語表出
この部位に障害が残ると、生活をする上で必要な情報を整理、計画、処理していく一連の作業が困難になります。
1.遂行機能障害
例えば、リハビリを行う際に「とりかかるのが遅い」「時間がかかりすぎる」と指摘されます。次の行動を自分で考えることが苦手で、マイペースになります。
2.非流暢性失語
言語表出に問題を生じると「失語症」を発症します。
非流暢性失語では、努力しても話はつっかえ、しゃべり方も遅く、リズムや抑揚に乱れが出ます。ほとんど無口で話をせず、他人とのコミュニケーションが困難になります。
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側頭葉の障害
側頭葉が担う機能は次の通りです。
記憶・聴覚・嗅覚・言語理解
この部位に障害を受けると、失認症・失語症・記憶障害など多彩な障害が発症すると考えられています。
1.流暢性失語
非流暢性とは逆に、正常に話そうとしますが、出てくる単語は錯誤が起こり、意味不明になります。
症状としては、簡単な単語が出てこない・本が読めない・話がうまく相手に伝わらず何度も繰り返さなくてはならない・人の話は理解しているようだが返事が文章になっておらず会話が成立しない、などが挙げられます。2.聴力失認
音は正常に聞こえるが、何の音かが理解できない症状です。
一般の音は理解できるが言語が認識できないケース、音楽についてのみ認識できないケースなどもあります。生活環境で発生する音を聞き分けることができなくなり、深刻な症状です。3.記憶障害
記憶のメカニズムのどこか一部分が欠け、格段に記憶力が低下してしまったり、新しいことがどうしても覚えられない「前進性健忘」、以前の記憶を失ってしまう「逆行性健忘」などがあります。
約束した日時を記憶できない・あちこちにものを置き忘れていつも探し回っている・迷子になる・学校の勉強についていけない・日付、曜日、時間が理解できないなどの症状があり、常に新しいことを吸収しなくてはならず日常生活が非常に困難になります。4.地誌的障害
出かけると近所であっても道が分からなくなり、目的地にたどり着くことができません。
場所を認識することが困難になり、目的地にたどり着けたとしても、帰りは方向感覚を失って帰れなくなってしまいます。
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頭頂葉の障害
頭頂葉が担う役割は、次の通りで、感覚の中枢となっています。
触覚・空間認知・視覚認知
1.半側空間無視
自分のどちらか半分(脳の対側支配の関係上左半分が多い)の概念がなくなっており、自分が意識して見ている空間の片側を見落とす障害です。
食事をすると左手前においてあるおかずを取り残す・左からやってくる人に気づかない・まっすぐ歩いているつもりでも右側に寄っていく・左側に見える風景は完全に無視する、などの症状が見られます。
本人は半分なくなっているという感覚や自覚を持っておらず、眼科的に精査を繰り返しても解明されません。2.失行症
今までできていた行動ができなくなることを失行症と言います。
頭頂葉が障害されると、情報、耳から入った命令、触れた感覚、目で見たもの等の統合や意味づけが不可能となり、結果として失行に繋がるのです。
失行には様々な類型がありますが、日常では、靴の紐が結べない・橋をもって食事ができない・動作が緩慢で何をやらせるにも大変な時間がかかるという症状が見られます。
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後頭葉の障害
後頭葉が担う役割は、視覚に関する働きです。
1.視覚失認
視力や視野は保たれているのに、物を見てもそれが何であるか分からない、その物の使い方も分からないという症状です。この場合には、触れてみたり音を聞くと分かるようになります。
例えば、見ただけではミカンとカキの区別がつかず、触ってみて初めて区別できることがあります。2.相貌失認
人の表情や顔の識別ができない障害です。しかし、視覚的に区別できないということなので、知っている人であれば、その人の声を聞けば識別できるというような症状があります。
3.同時失認
個々の細部について理解や認識はできるが、全体の状況が把握できない障害です。
人間の脳は、各領域が相互に連絡しあって物事を認識していますが、相互の連絡が遮断されてしまうことによって起こる症状です。
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その他の障害
1.Gerstmann症候群
優位半球(利き手と逆の脳)の角回の部分が障害されることによって生じる障害です。
左右失認・手指失認・失算・失書の4つの症状を特徴とします。2.注意障害
特定の部位に依存する障害ではなく、広範囲な領域にわたる損傷によって引き起こされる障害です。
代表的な症状には、すぐに疲れる・根気がない・すぐに飽きる・我慢ができない、等があります。3.行動や情緒の障害
少しのことでパニックになり、興奮したり泣いたりします。反対に、自発性・積極性が極端に低下し自ら全く動こうとしないこともあります。これらの正反対の状況を繰り返すことも頻繁で、非常に不安定な状態です。
高次脳機能障害でお悩みの被害者の方や、そのご家族の方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。
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