高次脳機能障害の各段階
本ページでは高次脳機能障害に関して,交通事故後の各段階で起こりうる問題と,その対応について解説します。
事故発生直後
事故が起こり、親族が頭部に損傷を生じるような怪我を負った場合、ご家族におかれましては被害者の心配が先行し、事故後の手続きやその後の交渉に向けてのことなど考えている余裕はないというのが当然でしょう。
しかし,事故直後でなければ集められない証拠もあります。弁護士と相談しながら,証拠集めを忘れていないかをチェックしましょう
■ケガの記録を残すこと
大きな怪我を負ったとき程、諸段階での意識障害の程度を記録しておくことや現状を画像診断してもらうことが、後に、後遺障害を申請することになった場合や,相手保険会社と示談交渉を行う際には重要な資料となることがあります。
■事故態様の記録を残すこと
また、頭部に重傷を負っている場合、被害者本人がすぐに事故状況を証言することは難しいでしょう。さらに、記憶障害などが発生してしまうと事故当時のことを正確に思い出すことができなくなってしまうことも考えられます。
そうなりますと、事故状況については主に相手の証言に従って記録が作成されてしまいます。相手が自分に不利な事実も包み隠さず証言するとは限りませんので、これに従うと「過失割合」が実際より被害者に不利に算出されてしまう可能性があります。
過失割合は、損害賠償額を決める段階において非常に重要になりますので、不当な過失割合を提示された場合には反論するためにも、事故状況(天候・辺りの暗さ・交通規制・車両の破損状況など)は可能な限り事故発生から早いうちに記録しておくことが望ましいでしょう。
治療入院中
被害者が治療入院中にも、様々な費用が発生します。一家の支柱が事故に遭って入院している場合、その間の生活費や、入院中にかかった諸費用について賠償がされるかどうかは心配の大きい部分でしょう。一刻も早く保険会社に補償してもらうべきですが、損害賠償は、示談ないしは裁判によってその額が決定してからでないと支払われません。
そこで、最低限のセーフティーネットとして、自賠責保険の「仮渡金制度」を利用することができます。仮渡金の額は師匠の程度によって4段階に分かれています。
例えば、酷い頭部の損傷で2週間以上の入院を要する場合には40万円を受け取ることができます。
また、入院中に生じた病院までの交通費や、要介護状態となった場合の諸費用について賠償を求めることができるかどうかについてもそれぞれに目安となる基準や額があります。
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問題となる費用
・付き添い交通費について
医師からの指示または相当の必要性があれば認められる
弁護士基準で入院6,500円・通院3,300円/日・見舞い交通費について
他の費目に含まれがちだが必要性があれば認められる
・入院中の雑費について
弁護士基準で1,500円/日
ただし、細かな注意点があります。「タクシーは交通費として認められない場合がある。」「入院雑費は証明できれば実費で請求が可能な場合があるので領収書をとっておくべき。」などです。
詳しい対応は、弁護士に確認してみると良いでしょう。
後遺障害認定について
事故後、治療を受けても、損傷が完治しなかった場合には,後遺障害の認定を試みることになります。
後遺障害が認定された場合には,損害賠償額に「①後遺障害逸失利益」と,「②後遺障害慰謝料」が加わります。このため,一般に,後遺障害が認定された場合は,損害賠償額が高額なものになります。
しかし、高次脳機能障害に関する後遺障害の申請には、多くの資料が必要で困難なことが多いです。
当事務所では,後遺障害の疑いがある場合は,後遺障害の申請の代理をしていますので、ご相談ください。
後遺障害については,こちらで詳しく説明をしていますので,ご覧ください。
介護が必要になった場合
高次脳機能障害などで、特に重度の後遺障害が残ってしまうと、家族や介護士の介護を受けながらでないと生命の維持・日常生活が送れなくなってしまいます。
このように、被害者の方に介護が必要になった場合には、損害賠償の中に「将来介護費」という項目が認められます。
将来介護費の金額
将来介護費は、症状固定時から平均余命までの幅のある期間について認められる損害ですので非常に高額となることがあります。
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将来介護費用
1日当たりの介護費用
×平均余命のライプニッツ係数
しかし,損害額の確定していない将来に向けての補償であるため、相手保険会社からの示談案は非常に低額で、裁判で認められる額の50%程度の提案になっていることもあります。
一般的に裁判では、家族の年齢や就労状況、介護される被害者の事情によって変動はしますが、家族の介護であれば8,000円/日、介護士による介護であれば1万2,000円/日という金額が目安となっています。示談交渉ではこれに準じた額を提示されることはまず考えられませんので、交渉中に多少総額されたとしても、適正な額を冷静に見極め基本的には裁判での解決を目指すべきでしょう。
当事務所では、裁判においても介護の実態を明確に立証し、被害者やご家族の今後のご不安を少しでも取り除くことができるよう、適正な将来介護費の支払を受けるお手伝いをさせていただきます。
■将来介護費が認められる場合
自賠責では、1級と2級にしか将来介護費を認めていませんが、3級以下には認められないのでしょうか?
この点に関しては、示談では厳しいでしょうが、裁判では認められる可能性があります。3級以下の症状であっても、見守りや付き添いなどがないと日常生活を送ることができない場合があるからです。
例えば、高次脳機能障害のある被害者の方の中には、重度の記憶障害等のために1人で通学をすることは不可能であるため、誰かが付き添わなくてはならないというケースが考えられます。
このように3級以下でも、明らかに1人では日常生活を送っていくことができない場合には将来介護費が認められる可能性がありますので、ご自身や親族のケースが該当するかもしれないと思われたら、当事務所までご相談ください。
裁判で気持ちを伝えたい
大切なご親族が悲惨な事故に巻き込まれ、重い後遺障害を負ってしまった場合、加害者に対しては強い怒りや憤りを覚えるでしょう。そのような気持ちを、ご本人が難しい場合にはご親族が、刑事裁判の中で訴えることができる制度があります。
加害者や裁判官に対して、被害者の方やご親族の気持ちを分かってほしい、伝えたいという方は「被害者参加制度」の活用を検討されてみてはいかがでしょうか。