休業損害の提示に納得いかない場合の対処方法
「相手から休業損害の提示があったが、適切な額かわからない」
交通事故によって傷害を負って働けない期間があった場合「休業損害」を請求することができます。この休業損害は、会社員などの給与所得者はもちろん、家事従事者( 専業主婦・主夫 )も請求する事ができます。
しかし、示談案では相手保険会社から休業損害が提示されなかったり、提示があっても金額が低いと感じる方が多いようです。
休業損害の算定方法と争点について、簡単にご説明します。
休業損害の基本的な計算方法
休業損害とは、交通事故による怪我などの傷害が原因で働けなかったために、本来は得られるはずであったのに得られなかった収入のことです。
休業損害の額は通常、
[ 1日あたりの基礎収入 × 休業日数 ]
という計算式に基づいて算定されます。
「1日あたりの基礎収入」とは、1日に得られるはずだった収入のことです。原則として、事故前3か月の実収入をベースに給与明細などに基づき計算されます。
「休業日数」とは、実際に仕事を休んだ日数です。
この中で「1日あたりの基礎収入」は、算定の基礎となる収入について争いになることがあります。
「1日あたりの基礎収入」に関する争い
請求者の職業別に、どのような点が争点になるのか見てみましょう。
①会社役員
会社役員の報酬には、「①労務提供の対価部分」と「②利益配当の実質をもつ部分」があると考えられています。
原則、1日当たりの基礎収入にあたるのは労務時間に比例する部分です。よって裁判の基準では、「①労務提供の対価」の部分のみが基礎収入とされています。
しかし、給与明細に①と②の額が分けて記載されていない場合も多く、記載された給与の中での①の割合が争いになることがあります。また、中小企業などの役員であり、現場で労務提供も行っているようなケースでは、報酬に「②利益配当の実質」が含まれていないと判断されることもあります。
②自営業者
自営業者の「1日あたりの基礎収入」は、前年の確定申告を基準に算定されます。
しかし、自営業の場合、節税のために所得を低く抑えた確定申告をしていることがあり、どの収入額を基礎として1日当たりの基礎収入を算定するのかが争いとなることがあります。
③主婦・主夫(家事従事者)
主婦・主夫業は、外部から給与として金銭を得る職業ではありません。しかし、家事労働も一つの労働としてその対価を観念することができます。
この場合、実収入はないので「1日当たりの基礎収入」をどのように決定するかが問題となります。
現在、任意保険会社による計算では5,700円/日とされているケースが多いです。
しかし、弁護士が保険会社と交渉する際に用いる「裁判基準(弁護士基準)」によれば、原則として約1万円/日とすることができます。
なお、兼業主婦・兼業主夫であっても、1日当たりの収入が1万円より低い場合は基礎収入(1日当たり約1万円)を用いることができます。
休業損害に納得できない場合
ご自身で相手保険会社と示談交渉をしており、提示される休業損害の内容や額に納得できない場合には、弁護士に交渉を引き継ぐことが非常に効果的です。
弁護士は、「裁判基準(弁護士基準)」をベースに交渉をすることができます。
「裁判基準(弁護士基準)」に基づくことで、1日あたりの基礎収入を増額できるなど、休業損害を増額できる余地が生まれます。